良縁-その先の人生を見つめて

第6章 三十五年の歴史の重み ― 父、宮原嘉寿のこと

名店から老舗へ

私どもの会は、仲人というある意味では“古い”システムを中心に、これまで運営してきました。三十五年間そのシステムは基本的には変わっていません。経営についても、バブル景気のときも変わらなければ、現在の不況でもまったく同じです。新しいものをどんどん取り入れて手を広げていくという方法もあるでしょうが、私自身は変わらないものを長く続けていくというこれまでの方法でいいと思っています。
システムは変わらないものの、最近少し変化が見られるのは会員さんたちの志向です。バブル時代は、みんな都会志向で農家を希望する人は皆無でした。ところが、最近は田舎のほうがいい、自給自足の生活がしたいという人もポツポツと表れています。また、雑談のときに会杜勤めをしている男性に、「どこまで出世したいですか?」と聞くと「課長がいいところかな。それ以上の管理職になると逆にたいへんだし」と答える人が多くなりました。昔は、サラリーマンでしたら役員が最終ゴールだったのでしょうが、今の人たちは「定年までいることができたら御の字」というほどです。
そうなると、昔よりもより家庭生活を充実させたいと願う人も増えてきたと言えるでしょう。昔は、会社の部下を自宅に連れてくるというご主人もたくさんいましたが、今はそんなことはほとんどないそうです。また、会社側も社員の家族のための芋掘り大会など、家族向けのイベントを行っていましたが、それも少なくなりました。父が何十年も前から言っていた「少子化、核家族化」が本格化し、家族と過ごす時間が増えてきているだけに、伴侶を見つけるのに皆さん慎重になってきていると言えるでしょう。慎重になりすぎたためか、独身のほうが気楽に思われるのか、パートナーを見つけて自分の子孫をつくる人が少なくなっているのは、今や国を挙げての問題となりつつあります。そんな時代に、私どもの会のような存在は、今後ますます必要とされるのではないでしょうか。

ゆくゆく私たちがぶつかる問題は、国際結婚だと思います。父はよく「国際結婚は、相手が日本では探せないから外国で探すというマイナス志向ではなく、言葉や文化をクリアした人たち同土のもっと高いレベルで行うべきものだ」と言っていました。確かに、ポジティブな国際結婚で二つの文化を持った子どもたちが増えていけば、戦争も減っていくかもしれません。現在は、会員の条件に「日本国籍を有する人(永住権も含む)」としていますが、いずれ直面しなくてはならない問題だと考えています。

今、携帯での出会い系サイトや、コンピュータでマッチングした相手とお見合いするシステムなど、間に人を介さないやり方が多いなかで、私どもの会員さんが増え続けているというのは、「少子化」の流れを背景に、古き良き風習を残した新しい形の仲人さんを認めてくださっている方が増えているのだと思います。
「仲人」を使った言葉に「仲人口」「仲人七嘘」などがありますが、いずれも仲人が縁談をまとめるためにほどよくとりなしていう言葉で、当てにならないことを表しています。けれども、私どもの会において、仲人さんは真実を告げる人であり、会員さんが本音で相談できる相手であり、迷っている方の肩をポンと押してあげる人です。
父が三十五年前に「百年続く」よう作ったシステムを保ちつつ、会員さんたちの信用をさらに重ねていくことによって、仲人についてのこういったことわざが、いつしか辞書から消えてなくなる日が来ることが私の夢です。

※現在では、国籍で入会をお断りすることはありません。